この音楽業界、本当にいろいろな形態の演奏がありますが、個人的にピアノ奏者の強みは何と言ってもソロで演奏できることではないかと思っています。
もちろん他の楽器でもソロ演奏は可能ですが非常に限られた範囲で、特に歌の人などはよっぽどでない限りは必ず伴奏者が必要になります。
ただ単にソロピアノと言っても慣れと経験がなければ難しいのでピアノが弾ければ誰でもできると言う訳ではなく、ここで言うソロピアノ演奏はコンサートではありません。
遡ると私のひとり弾きの初仕事はまだウィーンに来る前、高校を卒業するかしないか?くらいだったと思います。
当時あちこちで弾き語りをしていた母の代理で急遽私が行く事になりました。私は歌は無理なのでピアノだけですが、ジャズやポップスのスタンダード楽譜をどっさりと持って行きました。
その時は高級ホテルでの演奏で、母からは歩き方から出入りの仕方、楽譜の持ち方まで相当厳しく言われていたのでかなり緊張した記憶があります。初めてのラウンジ演奏でしたが気前よくチップを置いていってくれたお客さんもいました。
そこでは何度か演奏し、あとカフェサロンで弾いたこともあった様ななかった様な(記憶が・・
子供の頃からクラシックはみっちりやって来ましたが、並行してハモンドオルガンや他の音楽もやっていた私はそっちの方が何万倍も楽しくて、進路を決める時にジャズの道を希望したものの、いつも「まずはクラシック!」と母親に即却下されました。
そんな話はさておき、ソロピアノ演奏の話に戻ります。
ソロピアノのプログラムは主に
ジャズスタンダード
ボサノバ
バラード
映画音楽
エヴァーグリーン
など
客層や場所によっては軽めのクラシックやウィーンリートもプログラムに加わります。なぜかこの写真の時は2段譜まで持参していますが普段はもっと身軽で簡単なメロディーとコードだけのリードシートを持参しています。
各種パーティーや展覧会など、規模や形態は様々ですが1人だと自由にプログラムを組めるので楽しいです。
ところで、なぜ私が今こんな事を書いているかと言うと、今まで約10年間オーストリア内閣の政治家が集まる新年パーティーで毎年ソロピアノを弾いていたのですが、コロナで全てキャンセルになり、その間にトップ交代があり、去年はコロナ以来やっと復活したと思ったら、さらにそのイベントを担当していた人が産休で違う人が担当になり、かなりギリギリで依頼がありました。年末に内閣改造があったりすると来賓が決まらないので本当に大変そうでした。まぁ私はただ行って弾くだけなのであんまり関係ないですが。
ここではいつも300曲くらいのレパートリーを準備していました。
もちろんギリギリでも日程さえ調整できれば大丈夫です。
演奏は休憩しながら約4時間ですが、途中で来賓スピーチがあったり好きな時に休憩できるのでかなり自由です。
最初は気にならない程度の音量で、ゆるめのミディアムテンポなど、時間が経つとゲストもお酒が入って次第に話し声も大きくなるので演奏もそれに合わせてちょっとファンキーにしたりアップテンポにしたり。
あとはゲストの様子を見ながら曲と曲の間、アウトロとイントロをいかにうまくスムーズに繋ぐか・・用意しているプログラムでもその瞬間に合いそうになければ片手で曲を繋げつつ、同時に別の片手で全く別の譜面を探したりもします。つまりピアノ演奏かつDJ状態な訳ですが、これはもう本当に慣れるしかありません!!
ずーっとお客さんを観察しているとそれはそれで面白いです。
そして10年も行っているとだんだんと顔ぶれも変わり、知らない人が増えていきます。そんな中、毎年のケータリングのオーバーケルナー(ヘッドウェイター)さんだけはずっと一緒!前回はコロナ後で3〜4年越しでしたが「ヤーーー!キミは絶対来ると思ってた!!」ってお互い顔見知りだけど、名前も知らないのに、1年に1度しか会わないのに、盛り上がってしまいました。笑
そんなVIPで面白い新年パーティーですが、今年は依頼がありません。
前回すでに時間がかなり短縮されていて、ケータリングも食事というかスナック程度になってたし、やはり経費削減?
私はもう今の内閣もよく分からないし、今年はそのパーティー自体もあるのかどうかも分からないですが、長年携わって来たのでやはりちょっと寂しいです。
と言う事で恐らく今年はこの新年パーティーのお仕事はありませんが、いつでも対応できる様に待機しています。笑
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